BICSとCALP 2種類の会話レベル
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カナダの心理学者ジム・カミンズによると会話能力には、2種類の異なる会話能力・段階があるという。
一つはBICS(Basic Interpersonal Communication Skills)と呼ぶ「基礎的な対人会話能力」だ。
BICSは、いわゆる「日常会話」のレベルで、話し相手が目の前に居ることが前提だ。
話の内容も、身近な人間の話だったり、食べ物や具体的なモノの話が中心になる。
抽象的な概念や、難しい専門用語、論理などを殆ど使わない会話で、言ってみれば「小さな子供でもできる会話」だ。
一方、CALPとは、Cognitive AcademicLanguage Proficiencyの略で、「認知的・学問的な言語能力」などと訳される。
これは目の前にいない人にも、何かを伝えられる言語能力で、文字に起こしても伝わる会話法だ。
学問やビジネスで交わされる、専門用語や論理を伴う会話能力だ。
CALPレベルの会話では、仮説を立てるとか、推論する、評価するとか、一般化する・分類する、などといった「抽象的な操作」が行われる。
すでに学んだ知識や経験から、様々なモノを比べてみたり、仮の話としていろいろ考えたりする。
あるいは、何らかの方法で点数化したり、パターンとして捉えたりすることで、似たものを集めてクラスターを作ったりして、妥当な結論を得ようとする。
こういう様々な操作を行うことで、我々は抽象的な事を理解するわけだ。
勉強ができない子供は、人の顔を見る
学力に乏しい生徒は、BICSレベルの会話しかできないことが多い。
というのもCALPレベルの会話というのは、脳が発達していないとできないからだ。
CALPレベルの会話では、様々な知識や経験を頭から引き出す。
そしてそれを目の前の状況と比べながら、脳の前頭葉で統合しながら話す。
なので大人でもボケていたり認知症になると、考えがまとまらずに会話できなくなってしまう。
このCALPレベルの思考能力を養うのが、小学校4年生以降の勉強になる。
なので、勉強ができる子供とは、CALPレベルの会話ができるけれど、勉強ができない子供とは、BICSレベルの会話しかできないわけだ。
そして生徒の会話能力が、BICSレベルなのかCALPレベルなのかは、抽象的な会話ができるかどうかで分かる。
と言っても、そんなに難しいことではなくて、速さだとか濃さだとか人口密度などの簡単な問題を出してみれば良い。
あるいは長さと面積とか、体積や容積の話とか。
BICSレベルの子供の場合は、こういう抽象的な問題が苦手なので、たいていの場合は解けないのだが、困ったときにどうしてるかをみると良い。
というのもBICSレベルの子供というのは、分からないときに、他人の顔を見るからだ。
CALPレベルまで進んでいる子供は、分からないときに問題文に印をつけたり、絵や図を描いて、なんとかヒントを得ようとする。
仮説を立てたり推論することで、何とか答えに辿り着こうとするのだ。
ところが未だにBICSレベルにいる子供は、そういう工夫ができないもんだから、誰かに教えてもらおうとする。
こういうのはクセになってしまうらしく、高校生になっても、分からないことがあると、キョロキョロしている元中学受験生もいる。